塾長ブログ

『世界に誇る日本の数学力』 ~ABC予想の証明が認められる~

中学校の生徒の夏休みの課題に
「数学者についての新聞を作る」
というものがあります。
そんな生徒達に少しでも役に立てればと、今回はそんなお話です。

少し前の話ですが、2020年4月3日
数学の未解決問題の中でも最も重要な問題とされている『ABC予想』が
ついに解き明かされたとのことです。
解き明かしたのは、何と日本の望月新一教授。
単純に凄い。

そもそも、『ABC予想』てなんぞ?
式で表すと
a+b=c
何てシンプルな式。
でも超難問。
言葉で表すと

「a+b=cを満たす、互いに素である3つの自然数の組(a,b,c)に対し、
積abcの互いに異なる素因数の積をdとする。
このとき、任意のε>0に対して、c>dの(1+ε)乗を満たす組(a,b,c)は、
たかだか有限個しか存在しないであろう」

という予想。
ふむ、言葉にすると超難問であることが途端に伝わってきます。
「互いに素」とか、「互いに異なる素因数の積」とか、
なかなか難しい言葉が散見されます。
いや、失礼。なかなかどころじゃないですな。
そんな世界中の天才たちが頭を抱えてきた難問題。
それを日本人が解き明かしたというのですから、
これはもう誇らしいじゃないですか。
しかも、ここ京都が誇る京都大学の
数理解析研究所の望月新一教授が解いたとのことで、
個人的に輪をかけて素晴らしく感じます。
ちなみに、京都大学数理解析研究所とは京都大学の附置研究所で、
「数学・数理科学の進歩を担う独創的な研究者の育成を目指す」機関だそうです。
数学界のノーベル賞(※ノーベル賞には数学賞がないため)と言われている
フィールズ賞の受賞者も排出する由緒正しき研究機関。
日夜数学の研究に明け暮れ、人類の発展に寄与しておられると思うと頭が下がります。

さて、4月3日のニュースで、表題にある通り
ABC予想の証明が「認められた」とのこと。
…認められた?
そう、証明それ自体は2012年の時点でされていたそうなんです。
なんで8年後に認められたん?
答えは簡単。
証明の内容が難しかったからです。
誰かが「証明できた!」と発表しても、
「ハイ、証明完了」とはいきません。
「ホントに証明出来てんのん?」と検証作業が必要な訳ですね。
当然です。
で、検証作業を世界中の天才たちがやってくれるのですが、
望月教授の証明が難しいのなんのって。
超難問であるからこそ、超難解な証明。
その証明は何と600ページに及ぶとか。
更に望月教授は「証明するために必要だ」ってんで新しい理論を創っちゃって、
それがまた難解というか斬新だというんですから驚きです。
望月教授が証明のために創り出した理論は、
『宇宙際(うちゅうさい)タイヒミュラー理論』です。
更に更に驚きなのは、望月教授曰く

「宇宙際タイヒミュラー理論の構築がメインであって、
構築したらついでにABC予想が解けちゃった」

だそうです。もう何が何だか(笑)
宇宙際タイヒミュラー理論(略してIUT理論と呼ぶそうです)は、
今までの数学の考え方とは異なった新しい考え方なので、
今までの数学の考え方に慣れ親しんだ方々には敬遠されていたようです。
というか、実際のところ、どんな理論なのか完全に理解出来るのは望月教授しかいないとのこと。
しかし、世界中の天才たちは負けません。IUT理論を読み解きます。
そして、「正しいことは分からないが、間違ってはいなさそう」
となって、8年かけてIUT理論を受け入れます。
8年かかりましたが、
「IUT理論を新しい理論として受け入れよう。」
となると
「IUT理論を用いるとABC予想もどうやら証明されているぞ。」
となり、めでたく証明認定です。
いつの時代も斬新な考え方はなかなか理解されないものです。
が、証明されてしまえばこっち(人類)のものです。
今までになかった理論は、今まで解けなかった問題を解決してくれます。
証明が難しかった問題をバシバシ解き明かしていって欲しい。
ABC予想も、証明されることによって他の難問が芋蔓式に解ける様になるのだとか。
様々な難問を解き明かすことによって、人類の発展にどれだけ貢献するか計り知れません。
アインシュタインが相対性理論を構築してGPSなんていう超便利なテクノロジーが開発されたように、
これからどんな速度で進歩していくのか今から楽しみです。
例えば、ABC予想が証明されることで、無限に近い膨大な計算を必要とする問題が
短時間で解けるようになったりすると、これはもうコンピューターの一大事です。
計算の早さはそのまま性能の向上につながります。
先日、日本のスパコン「富岳」が世界一になりましたが、
性能の向上は、日常生活を一変させる力があります。
数学も日本の数学者も凄いことが伝われば幸いです。
興味が湧きましたら他の数学者についても調べてみましょう。
ガウスやオイラーや関孝和とか、本当に同じ人間なん?
と疑わしくなるくらいの偉人がたくさんいますよ。

まあ、正直、常々
「数学なんて将来役に立たない」
とか言っちゃう生徒に聞かせたい話でもあります。
まあ「役に立たない『から勉強しない』」と言いたいだけで、
本音は勉強から逃げたいだけなんですがね。
厳しいようですが、残念ながら現代社会は
勉強したことを活用できる人が得するようになっています。
例えば、数学を知らない人が損をするようになっているのが現代社会です。
勉強しない=将来の損失は目に見えていますので、
お子様が似たようなことを言いだしましたら、保護者の皆さんは、
「はいはい、したくない気持ちは分かったからさっさと勉強しようね」
と、一旦気持ちを認めてあげた上で勉強させてください。
決して説得しようとしないことがコツです。
説得しても絶対に勉強が将来役に立つことを認めません。
認めたら勉強しなくてはいけなくなるからです。
勉強しなさそうなら志塾に放り込んでください。
環境を変えるのも一つの方法です。

小・中・高校生の間は、
「勉強する」or「勉強しない」
の選択肢ではなく
「勉強する」がスタートで
「いつ勉強する」「どのように勉強する」「何時間勉強する」
の選択肢で考えるものです。
「勉強しない」は残念ながら選択肢にありません。
個人に合った方法で学習を進めていきましょう。

最後まで御覧くださり誠にありがとうございます。