塾長ブログ

『天才は1%の閃きと99%の努力』

人類が2000年以上解決できなかったレンズの収差問題がついに解決!

7月8日のネットニュースで、実に興味深い記事がありました。
科学者を2000年以上も悩ませていたレンズの収差問題が、ついに解決されたとのことです。

…レンズの収差問題って何?

ですよね。私もそう思いました。
が、「人類が2000年以上解決できなかったものが解決」と眼にした瞬間、俄然「凄い!」と感じてしまいました。
2000年という西暦と同じくらいのあいだ謎だったものが解決されたということは素直に凄い。それがどんな問題なのかよく分からないとしても。
ただ、分からないまま「凄い!」で済ませるにはもったいない気もしますので、まず収差問題とは何ぞや?から取り掛かってみましょう。

レンズの収差問題とは、レンズを通ったときの光の屈折に関する問題とのことです。
そう、レンズと光の屈折と言ったらアレです。中学1年で習う光の屈折。
あの単元では

「凸レンズに光を通すと、焦点を通るように屈折する」

と習いました。
が、それは理論上の話。実際には全ての光の筋が焦点を通るわけではなく、焦点を通らない光も少しはあるのです。より多くの光が通る場所を、焦点としているということですね。
人類は2000年以上も前から、鏡やレンズを使って光の屈折を利用していたんだそうです。
鏡を使って光を集めて敵の船を焼いたり、レンズで望遠鏡を作って星空を観察したり、といったように。
仕組みは何となく分かるが、何故そうなるかは証明できない。でも便利だから使おうぜ。てな感じでしょうか。
証明は出来ないので、レンズを作っても精度は当然バラバラ。精度が悪いと、焦点を通る光が少なくなり、レンズを通した像がぼやけます。望遠鏡を覗いてもハッキリした像が見えず、写真を撮ってもピンボケになるといった具合ですね。
しかし、人類は経験と工夫を重ねてレンズの精度を上げ、他の機構(しぼりや反射鏡など)も利用して、光の屈折を調整していきます。これまで収差問題が解決されていなかったのに、望遠鏡を覗くと遠くの星でもハッキリ見え、写真もどんどん綺麗に写るようになっていったのは、人類の苦労の歴史と言えるでしょう。仕組みを完全に理解していなくても、試行錯誤を積み重ねて品質を向上させていったのです。

ちなみに、日本人は、特にモノの品質向上について、はるか昔から世界有数の技術を持っています。日本の職人が作るレンズは世界でも最高峰のレベルだそうです。より多くの光を焦点に集める高級レンズを手作業で作ってしまう。その技術には本当に驚かされます。

そんな中、科学者たちも何とか収差問題を解決すべく研究します。でも証明できない。そんな悩みが2000年も続きます。が、冒頭で申しましたように、この度、人類を悩ませた収差問題がついに解決されたのです。
解決したのはメキシコ国立自治大学で博士課程(大学院)の学生である、ラファエル・ゴンザレス氏。以前からレンズの収差問題について数学的に取り組んでいたゴンザレス氏。ある日の朝食中、パンにヌテラ(チョコレートジャム)を塗っていたら突然アイディアが閃いたとか。
なんてのどかなひとときに、とんでもないことを閃くのか。
でもまあ、閃く時は案外そんな時なのかも知れません。
そして、閃いたアイディアを数式に表し、コンピューターでシミュレーションを行ったところ、レンズの球面収差問題を解消できたとのことです。その数式は公式として発表されています。
謹んで拝見しましが、正直申しまして何が何だか分からない公式です。
公式ってもっとこう…、スッキリしたものじゃないの?と思うくらい複雑な式が並ぶ並ぶ。
こんなの公式じゃねぇ!と叫びたい気持ちでいっぱいです。
でも数学者が見れば「なるほど、そういうことだったのか~」てなるんでしょうね。数学者凄ぇよ。

ともあれ、レンズの収差問題が証明されたということは、今まで職人の腕にかかっていたレンズの加工技術が、数式によって機械で同等レベルかそれ以上のレンズが作れるようになると期待できるのではないでしょうか。安価で高精度なレンズが生産できるようになると、技術革新も進み、星やミクロの世界で新たな発見も出てくるかもしれません。何とも夢のある話です。

今回のゴンザレス氏の導き出した一見絵画のような公式を見ていると、閃きは努力によって導き出されるものだと再認識しました。
難解な数式を閃くのは、難解な数式を使いこなす知識を持っていたからです。
また、数学的な知識の他にも、様々な分野の知識や実験などの経験もおそらく豊富に持っておられたはずです。
それらが重なり合ったとき、閃きとなってゴンザレス氏の頭に文字通り「降りてきた」のでしょう。

かの有名な発明王エジソンも「天才は1%の閃きと99%の努力」と言っています。
私は、この言葉を「努力を積み重ねることで閃きに到達する」と捉えています。
何となく過ごしているだけなのに、ある日突然閃いて大発明を行う。何てことはまずあり得ないと。
閃くのは、閃くだけの素養があり、何かのきっかけで閃くのだと。ゴンザレス氏のように。
私も、指導方法の勉強を積み重ね、より生徒に分かりやすく伝わる解説を閃きたい。
そして、閃く楽しさを生徒に伝えたい。
そんな気持ちで日々勉強していきたいと思います。

最後まで御覧いただき誠にありがとうございます。